台湾・高雄の公共自転車「City Bike」体験記 【入門編】
人と街をつなぐコミュニケーションツール。
金沢レンタサイクルまちのり。
先週末から本日にかけて、公益社団法人日本交通計画協会が支援する都市交通調査団の一員として、台湾・高雄市に行ってまいりました。
高雄市は、台湾南部に位置する人口約280万人の都市であり、台湾最大の工業都市として発展してきました。経済発展の一方、工業活動や自動車・原付バイクの普及にともなう大気汚染の影響から、現在、公共交通を軸とする生活スタイルへの転換にチャレンジしています。
そのような中、今年7月には架線レスのLRTが一部区間で開通、試験運行が行われており、世界的な注目を集めています。
▼話題の架線レスLRT。上空に架線がないので景観もスッキリ!
運営事業者である「高雄捷運」(通称:高雄メトロ、KRTC【Kaohsiung Rapid Transit Corp.】)は、地下鉄、LRT、バス、そして自転車シェアリングといった公共交通全般を統合的に手掛けています。
日本では、これだけ多様な交通モードを統合的に扱う交通事業者はなく、それぞれの交通手段ごとに交通局や民間事業者などが運営していることから、事業者間の連携が十分図られていないこともしばしば。
一方、台湾・高雄市では、諸外国の公共交通関連技術を参考にしながら、日本の一歩先を行くようなトータルサービスを提供しています。
今回はその中から、まちのりスタッフ目線で、高雄市の自転車シェアリングサービス「City Bike」(旧名:C-Bike)の操作方法についてご紹介します。今回は「入門編」として概要や使い方の説明を中心にお届け。次週は「体験編」として、高雄市内の自転車通行空間も含めてレポートします。
▼こちらが「City Bike」のステーション。地下鉄やLRTの駅付近に必ずステーションが整備されており、地下鉄やトラムではカバーしきれないエリアの移動(ラストマイル)を支えています。利用方法について、観光客は基本的にクレジットカード、市民は交通ICカード「IPASS」を使用。利用料金は最初の60分無料(IPASSによる地下鉄利用者は90分無料)。24時間使用可能です。
▼体験乗車の前にまずは座学から。高雄メトロの公共自転車スタッフの黄さんより概要をご説明いただきました。高雄メトロでは、2011年より高雄市政府から「運営」と「メンテナンス」に関する業務を受託。つまり、システムや機器類は市政府のもので、それらを公共交通として適切に運営・管理する役割を担っています。当初49ステーションから現在では185ステーションに拡大(5年間で3.8倍)。2017年には300ステーションに増やす計画があるそうです。凄まじいスピード感。。。ちなみに自転車台数は2,400台とのこと。
▼公共自転車の使用に必要となるIPASSカード(ICカード)。普通は台湾の身分証明書がないと登録・発行できませんが、今回は特別に準備してくださいました。観光連携をおこなっている江ノ電の絵柄の限定カード。多謝!
1.自転車の借り方
▼こちらは「City Bike」の消防局前ステーション。
▼公共自転車の借用・返却にはこちらの端末機を操作します。
▼上の方に利用方法が掲載されています。わかりやすい!
▼ここで「IPASS」登場。
▼このように、所定の場所に置きます。カードを置く場所などが違うタイプの端末機もありますが操作方法は同じです。
▼数秒待つと、このような画面に切り替わります。
▼借りたい自転車がロックされている場所の番号(下写真の丸い番号)を入力し、右下の赤いボタン「確認」を押します。
▼すると、緑と赤のボタンが点滅するので、「赤いボタン」を押すと、ガチャリという音とともにロックが解除され、レンタル完了です。とても簡単ですね~♪
▼メリダ製の自転車。他都市では標準装備となっている変速機は無し。基本的に3年で自転車全台の定期更新を行うことが前提となっているため、必要最小限の機能に抑えられています。フレームは軽量です。
▼後輪部分のドレスガードは広告スペースに活用。1か月の延べ利用者数が20万人超であり、ステーションの場所も良いことから、かなりの掲出要望があるようです。
▼ライトはもちろんLED。前輪ハブダイナモで自動点灯します。
▼後輪部分のバックライト。車道を通行する場合にはクルマや原付と混在することから、夜間も含めて安全に配慮されています。
▼馬蹄形のロック。お馴染みです。
2.自転車の返し方
▼返すときも端末機を操作します。まずは自転車をラックに挿入します。前方のハンドルのところの突起をガチャリと差し込みます。
▼ロックされたことを確認し、端末機へ。借りるときに使ったIPASSカードを所定の場所にセットします。
▼数秒待つと、返却完了のアナウンスがあり、画面上に利用履歴が表示されます。もし60分以上(IPASS利用者90分以上)使用して追加料金が発生した場合は、IPASSチャージ残金から引かれるので要注意。
以上、City Bikeの利用方法でした。
日本からの観光の場合は、クレジットカードを用いて、下記の要領で利用できます。上記のIPASSの代わりにクレジットカードを使うイメージです。台湾・高雄へお越しの際はぜひご利用してみてください。
≪貸出≫
①端末機にクレジットカード挿入
②タッチパネルで借りたい自転車のラック番号を入力
③ラックの赤ボタンを押す
≪返却≫
①ラックに自転車を挿入
②端末機にクレジットカード挿入
③利用履歴が画面上に表示されて完了
公共自転車「City Bike」を体験した感想や、随所にみられた運営上の工夫、自転車通行空間の状況などについては次週の【体験編】をお楽しみに!
ではまた。
<追伸>
今回の視察団メンバーは下記の通りです。現地では、高雄メトロの黄浚欽氏をはじめ、多くのスタッフの皆様に素晴らしいおもてなしをいただきました。また、通訳の朱さんにも素晴らしい対応をしていただきました。この場をお借りして心より感謝申し上げます。
▼調査団メンバー(50音順、敬称略)
井上 学(平安女学院大学准教授)
大野 悠貴(弘前大学大学院博士後期課程2年)
小美野 智紀(株式会社ドーコン)
片岸 将広(株式会社日本海コンサルタント)
塩士 圭介(株式会社日本海コンサルタント)
杉山 奈津子(東京急行電鉄株式会社)
鈴木 文彦(交通ジャーナリスト)
辻 寛(大阪大学特任助教)
辻堂 史子(株式会社シティプランニング)
福田 匡彦(青い森ウェブ工房)
三浦 清洋(公益社団法人日本交通計画協会)
諸星 賢治(株式会社ヴァル研究所)