まちネタ

台湾・高雄の公共自転車「City Bike」体験記 【実践編】

金沢のまちが、もっと好きになる。

金沢レンタサイクルまちのり。

 

本日は、先週日曜の予告どおり、台湾・高雄の「City Bike」続編です。

今回は、地下鉄・LRT・バス・公共自転車を統合的に運営する「高雄捷運」(通称:高雄メトロ、KRTC【Kaohsiung Rapid Transit Corp.】)が取り組む「City Bike」について、現場で垣間見た運用上の工夫をご紹介します。また、視察団一行での体験の様子と、自転車通行空間について少しだけご紹介できればと思います。

「City Bike」の詳細については、先週日曜日のブログをご覧ください。

まず運用面の工夫については、下記の3点を挙げたいと思います。

 

1.地下鉄構内の周辺案内図に公共自転車を掲載!

高雄メトロが運営する地下鉄の構内。下の写真のような周辺案内図は日本でもよくみられるものかと思います。

それもそのはず。高雄メトロでは、東京メトロの取り組みをかなり参考にされているとのこと。ここでも日本の技術が活かされています。

 

▼地下鉄構内の周辺案内図

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さすがは複数の交通モードを統合的にサービス提供をしている事業者。この案内図には、公共自転車であるCity Bikeの名称とステーションがしっかりと掲載されています。

当たり前のことのように感じるかもしれませんが、地下鉄と自転車の運営事業者が異なると、これがうまくいかないケースが多々あります。

高雄メトロでは、鉄道駅やバス停の間を結ぶ「ラストマイル」(各種の交通モードを結ぶ移動手段)として公共自転車を位置づけており、この案内図にはそのポリシーが明確に示されていると感じました。「まちのり」でもこういった連携ができればよいなぁと思います。

 

▼「公共脚踏車」=「公共自転車」のこと。「K」の文字を基本としたわかりやすいロゴマークで示されています。

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▼こちらは拡大図。駅周辺に2つのステーションがあるのがわかります。ひとつは1番出口を出て道路を渡ったところ。もうひとつは2番出口を出て写真下の橋を渡ったところ。

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▼こちらは1番出口からすぐのステーション

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▼こちらは2番出口を出て橋を渡ったところのステーション。

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2.屋根付き専用トラックによる再配置!

自転車シェアリングで最も重要となる作業は、自転車の偏在を解消するための再配置作業です。高雄メトロでは、しっかりした屋根付きの荷台を有するトラックを配置しています。市内185箇所のステーションを7台のトラックでカバーしているとのこと。

 

▼こちらが再配置用のトラック。

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▼荷台の内部。ざっとみて30台程度の運搬が可能。スタッフの方が忙しそうに電話中。

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▼スタッフさんのメンテナンスバッグ。キーボードはおそらくステーションの端末機に接続してシステムメンテナンスを行うものかと。。。ここはヒアリングできませんでしたので推測です。

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▼現地ヒアリングの様子。黄さんにいろいろと質問。通訳の朱さんのおかげで充実した意見交換を行うことができました。

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▼スタッフのお二人と記念撮影。ありがとうございました!

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3.利用頻度の高いステーションでは自転車ストックスペースを確保!

185箇所のステーションの中でも、利用頻度の高いステーションの近くには自転車をストックしておく場所を確保。これにより、利用者をあまり待たせることなく自転車の補充ができ、再配置の負担も軽減できます。ちょっとした工夫ですがとても効果的。「まちのり」でも一部実施していますし、岡山市「ももチャリ」や台湾・台北「You Bike」でも行われています。

 

▼三多商圏駅の自転車ストックスペース

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現地ヒアリングの後には、視察団一同でCity Bikeを体験。乗り心地や自転車通行空間の様子を確認することができました。

自転車に関しては、3年更新を前提に、過度な設備投資を行わない方針とのこと。変速機はありませんし、カゴもプラスティック製の小さく簡易なものとなっています。しかし、乗り心地にはまったく問題ありません。高雄市内は平坦なので変速機なしでもノー問題です。

自転車通行空間については、日本と同じく歩道上での分離が中心となっていますが、幹線道路では「緩速車線」や「原付バイクとの共用レーン」もみられました。

 

▼緩速車線を悠々と走る視察団一行。台湾は右側通行なので車道の右端を一列で快走!本線部分は50km/h規制、側道部分は40km/h規制となっています。

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▼信号待ちもこんな感じで一列に。路面の赤いラインは駐車禁止を示しているようです。

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▼ほとんどの歩道には写真左のような「自転車通行可」の標識が設置されています。これも日本を参考にした施策ではないかと想像しています。

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▼日本と同じく自転車横断帯も。

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▼こちらは原付バイクとの共用レーン。実際に走ってみましたが、大量の原付と走るのはなかなかスリリングでした(笑)。

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▼とにかく原付バイクの利用者が多いことに驚きました。原付バイク専用レーンや自転車との共用レーンが至る所にみられ、市民の足となっています。同じ台湾の台北でも多くの原付バイクが走っていましたが、自転車シェアリング「You Bike」によりその割合は減少傾向にあるとのこと。高雄でも、徐々に原付バイクから鉄道+自転車などへの転換効果が出てくるのではないかと思われます。

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▼最後に、実体験の証拠写真を一枚。

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以上、台湾・高雄「City Bike」体験編でした。

他にも、電動スクーターのバッテリーシェアや、とても美しい歩行者自転車専用橋、超高速シニアカーなど日本ではあまりみられないものをご紹介したかったのですが、思ったよりも長くなってしまいましたので、次回以降、どこかで番外編をお届けしたいと思います。

ちなみに、台湾・台北の「You Bike」などの自転車関連情報については、今年3月のブログをぜひご覧ください。

「Velo-City Global 2016 in Taipei」体験記(その1)

「Velo-City Global 2016 in Taipei」体験記(その2)

「Velo-City Global 2016 in Taipei」体験記(その3)

 

ではまた。

 

<追伸>

今回の視察団メンバーは下記の通りです。現地では、高雄メトロの黄浚欽氏をはじめ、多くのスタッフの皆様に素晴らしいおもてなしをいただきました。また、通訳の朱さんにも素晴らしい対応をしていただきました。この場をお借りして心より感謝申し上げます。

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▼調査団メンバー(50音順、敬称略)

井上 学(平安女学院大学准教授)

大野 悠貴(弘前大学大学院博士後期課程2年)

小美野 智紀(株式会社ドーコン)

片岸 将広(株式会社日本海コンサルタント)

塩士 圭介(株式会社日本海コンサルタント)

杉山 奈津子(東京急行電鉄株式会社)

鈴木 文彦(交通ジャーナリスト)

辻 寛(大阪大学特任助教)

辻堂 史子(株式会社シティプランニング)

福田 匡彦(青い森ウェブ工房)

三浦 清洋(公益社団法人日本交通計画協会)

諸星 賢治(株式会社ヴァル研究所)